あなたにもできる、靴のケア
 
 
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ミスター シューケア こと 安富好雄 氏のプロフィール
 
株式会社R&D 常務取締役
 
 シューケアの草分け的存在で、現在でも百貨店や専門店で、靴の手入れを
  実演されている、経験豊富なスペシャリストです。






靴の手入れについて
  靴の手入れ方法を知りたい……。こんな素朴な要望が、街には確実に増えています。
  フェラガモやテストーニ等に代表される有名ブランドの靴や、おしゃれで良質な靴が百貨店等でもたくさん販売され、 履かれるようになってきた今、本物だけが持つ美しさを維持したいと願う気持ちは当然といえます。
  ところが、手軽さだけが売り物であるインスタントお手入れ商品の、インスタントシューケア情報ばかりが、雑誌・テ レビや宣伝販売で発信されています。この結果、皮革についての知識が少ない消費者が、売り上げを追求する業者におどらされてし まっている例がとても多いのです。
  手軽なインスタントお手入れ商品を続けて使い続けることがもたらす結果は、明らかです。天然皮革の持つ美しさ・丈 夫さ・通気性は確実に失われ、靴の寿命を半減させてしまいます。これでは、「靴が大好き」「靴を大切にしたい」という人たちの 心を満足させることはえきません。
  正しいシューケアで、“靴がこんなに美しくよみがえる”ということを実感していただければ、靴がますます好きにな るでしょう。また“手入れをすることの楽しさ”も増し、ひいてはおしゃれをする楽しみも増すでしょう。これが私の願いです。

シューケアの基本
1.通気性を保ちましょう
  従来の靴手入れ方法は、見かけばかりが重要視されてきました。見かけとは“艶”つまり光沢です。と ころが、“艶”は 良いことばかりではないのです。靴で重要なことは足のムレを防ぐ通気性を保つことです。ピカピカに光っている靴 ほど通気性が落ち、ムレの原因になります。『必ず磨いて艶を出す』これが天然皮革の最低条件です。
2.『水』は靴の友達です
  従来『水』は大敵とされてきました。しかし、靴は放っておくと乾燥してきます。乾燥したまま使用していくと、傷がつ きやすく、色あせも起こります。
 ・乳化性クリーム(ビン入りやチューブ入り)には、水と油が混じり合っています。これで水分も補給できますので、靴クリームの基本 になります。
 ・中途半端に雨に濡れた靴は、染みになる可能性があります。その時は、タオル等をおしぼりのようにして、靴全体を湿らせてください。 部分的に塗れると染みになりますが、全体が塗れれば染みにはなりません。
 ・ひどく汚れた靴は洗ってください。サドルソープやスエードシ ャンプー等で表面を洗います。こうするだけでも、皮革の内部がきれいになります。
 水は多くのものをきれいにする力を持っています。上手に使うことで、皮革は長持ちします。ためしに、あなたの履いている靴をおしぼり で水ぶきしてみてください。天然皮革には、本当は水分が必要なのです。水がもたらす害のことばかりを気にせず、靴にとっての命の根源で ある、もう一つの水の顔を知って、シューケアに挑戦してみてください。

シューケアの手順
日常の汚れは専用ブラシでこまめにブラッシング。その日の汚れはその日のうちに落としておきましょう。汚れは蓄積すると、落ちにくく なります。
・靴の手入れ1(スムース・レザーの場合)
@ 最初にブラシでホコリや泥などをはらい落とします。ブラッシングで落ちない泥は、水を含ませたおしぼりで拭いてください。染みになり やすい淡い色の靴は、この方法で全体を湿らせておくといいでしょう。
A 水分が乾いたら、クリーナー(ステインリムーバー)で、その他の汚れや古い靴クリームなどを落として ください。お化粧の前の、クレンジングクリームと同じです。
B 竹ブラシなどで、乳化性の靴クリームを少な目に塗り、かたい目の豚毛のブラシで全体をブラッシングします。これは、塗ったクリームを靴 全体に広く薄くのばすためです。しわの間や、靴底とのすき間も忘れずに。
C Tシャツの古い布等を指に巻き、ブラッシングしたあとの靴クリームをこすり落としていきます。布が汚れたら、きれいな布の部分にうつし かえながら、きれいに落としていきます。こうすると表面がつるつるになり、皮革特有の“艶”が出てきます。これが『磨く』ということです。 靴クリームは最低限に残り、通気性もよくなり、靴が長持ちします。
D もっと艶がほしいときは、シューポリッシュ(缶入りワックス)を使えば、光沢と防水性が得られます。
・靴の手入れ2(スエードの場合)
新品を履く前に、スエード専用スプレー(無色のもの)をかけます。水分や汚れから、皮を保護するはたらきがあります。
@ 日常のブラッシングで落ちないときは…スエードクリーナー
全体がひどく汚れてしまったときは…スエードシャンプー
を使って洗います。
A 色が落ちたり、薄くなってきたら、補色スプレーやリキッドで補修します。
・靴の手入れ3(ヌバックの場合)
基本はスエードと同じですが、スエードが裏革を使用しているのに対し、ヌバックは表革を起毛したもので、見かけによらずスエードよりず っと丈夫です。そのため、ワイヤーブラシやサンドゴム(ガムベロア)のような厳しいものでこすっても傷まないどころか、よりきれいになるの で、手入れは楽です。

 よく言われることですが、同じ靴を毎日続けて履き続けると、靴の寿命はとても短くなります。3〜4足の靴をローテーショ ンで履き、できるだけ靴を休ませます。靴が吸った汗や湿気を放出させることが、靴の長持ちにつながるのです。

梅雨時の靴のお手入れ法
<お出かけ前>
 突然の雨に備え、防水処理をしてから外出してください。朝から雨が降っているときは、少なくともお出かけの30分前に防水スプレーをして おきましょう。スプレーが乾く前に雨に濡れると、防水効果が落ち、かえって靴が濡れにくくなります。

(防水の種類)
防水スプレー
皮革の通気性を損なわないようにしながら、防水効果を出す。霧状の吹き付けのため、若干ツヤがなくなる。
油性ワックス
ロウを皮革の表面につけることにより、防水効果を出す。ツヤも同時に出るが、通気性が損なわれる。ワックスばかり使用していると、革が 固くなることもある。
 
(商品特性)
ウォーリー3×3
オールマイティータイプの防水。乾燥が早く、表面の仕上がりが自然。強力防水剤であるシンパテックスを配合。
ウォーリースエードフレッシュ
スエード用栄養・防水スプレー。スエード・ヌバックに栄養を与え、皮革の乾燥を防ぎ、色あせを防止します。これをスプレーし ておくだけで、スエード・ヌバックの靴が長持ちします。また、定期的に使用することで、皮革にスプレーが染み込み、汚れがつきにくくなったり、 防水効果も出ます。スエード・ヌバック素材には、おすすめの逸品です。

<雨に濡れたとき(皮革をクリーニングする)>
 水に濡れてしまったスムースレザーは、一般的なチューブのクリーナーを使用しても汚れやシミ、白い汚れ(塩分)は取れません。濡れてしまった 靴は、できるだけ早くサドルソープでクリーニングしてください。皮革の硬直を防ぎ、表面の汚れや、皮革にたまっている塩分などを取り除き、皮革 がすっきりします。また、スエード、ヌバック素材はメルトニアン・スエードシャンプーでクリーニングしてください。

 靴が雨に濡れた翌朝、靴の表面に白い汚れ(塩)が出てきていて、サドルソープでクリーニングする時間のないときは、応急処置として、 ステインリムーバー (水性汚れ落とし)で塩分を取り除いてください。他のクリーナーでは、汚れはあまり落ち ません。

 濡れてしまった靴を乾燥させるときは、新聞紙(マメに取り替える)を詰め、風通しのよいところで陰干しする。半乾きになったところでシューキ ーパーを入れ、型くずれを防いでください。

(商品特性)
プロパーツ・サドルソープ
スムースレザー用石鹸。その名の通り、靴を洗う石鹸。スムースレザー用。水に濡れた革が固くなるのを防ぎ、柔軟性を出す。塩を吹いた靴や雨 に濡れてしまった靴に最適。本来は用具用の汚れ落としとして開発された。英国製。
メルトニアン・スエードシャンプー
スエード・ヌバック用シャンプー。スエードの靴の汚れを落とす。特に、薄い色のスエード・ヌバックの汚れ落としに効果的。
ステインリムーバー
皮革用汚れ落とし。水性のソフトタイプで、皮革の表面を痛めずに、表面の汚れや靴に染み込んだワックスやクリームを取り除く。塩吹きの除去 にも便利。

<シュートリーの選び方>
 さまざまなタイプがあるが、靴に合わないものは逆効果になる。基本的には左右がきっちりして、靴に無用な力がかからないものを選ぶ。

(スプリングタイプ)
  スプリングの反発力で、靴のアッパーを持ち上げるタイプ。リーズナブルで使いやすいが、スプリングの強弱に要注意。

オックスフォードシュートリー
スプリングが強いので、トラッドのように底が厚く、がっちりした靴に向く。
P−180シュートリー
スプリングが弱い。底が薄い靴やソフトな靴向き。
EM97シュートリー
調節タイプ。前後に引き延ばしができるので、ジャストフィットの調節が可能。一度固定してしまえば、その後は調節不要。形がよく、無駄な力 がかからないので、どんな靴にも向く理想的なタイプ。
FA85シュートリー
プッシュ式で内蔵スプリングが靴を前後に引き延ばすタイプ。ワイズ(横幅)の調節も可能。形もよく、ローファー等のトラッドタイプに向く。
ウッドロアーシュートリー
横幅、サイズ双方とも組み合わせたもの。レッドシダー(アメリカ産赤杉)の中心部分のみを使用しているので、防臭効果が高い。

<雨期の保管>

 乾燥剤を入れ、できるだけ湿気の少ないところに保管します。過信しないで、オフシーズン途中の天気の良いときに取り出してみることも 必要です。カビが出てしまったら、必ず乾いた布で払い落としたり、拭き取っておくこと。その後、カビ専用クリーナーや除菌タイプの消臭スプ レーを布にとって、よく拭き取ります。靴箱に保管するときには、靴箱にも消臭(除菌)スプレーをしておくことをおすすめします。


by Yoshio Yasutomi




 このページの著者である安富さんが書かれた、シューケアについてのコラムです。これまで知っているようで知らなかった、楽しいお話が 盛りだくさん。ぜひのぞいてみてください。

第1回
 
第2回 〜皮肉なクリーナーの話〜
 
第3回 〜革靴を洗う〜
 
第4回 〜塩吹き靴の怪〜
 
第5回 〜夢のクリーム〜
 
第6回 〜きゅー靴はイヤ〜
 
第7回 〜バッグの着色クリーム〜
 
第8回 〜シュー・ツリーの復活〜
 
第9回 〜ブリッ子業界〜
 
第10回 〜ソフトレザー万歳〜
 
最終回 〜シューケアと専門店〜




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